上後鋸筋と下後鋸筋の起始停止と作用は?触察やアプローチ法の紹介!

上後鋸筋と下後鋸筋とは

背部の筋(muscles of the back)は、浅側にある浅背筋と背部の主要部分を占める深背筋がある。深背筋群の第1層は上後鋸筋(serratus poste-rior superior m.)と下後鋸筋(serratus poste-rior inferior m.)で、菱形筋と広背筋に覆われ、椎骨の棘突起と肋骨をつなぐ(棘肋筋群)。

起始停止と作用

上後鋸筋(serratus poste-rior superior m.)

起始:第5頚椎~第1胸椎までの棘突起と項靭帯

停止:第2~5肋骨の肋骨角とその外側部

神経:肋間神経(T1~T4)

栄養血管:肋間動脈

作用:第2~5肋骨の挙上(吸気の補助)吸気時→収縮、呼気時→弛緩

下後鋸筋(serratus poste-rior inferior m.)

起始:第10胸椎~第2腰椎の棘突起

停止:第9~12肋骨の外側部下縁

神経:肋間神経(T9~T11)

栄養血管:肋間動脈

作用:第9~12肋骨を内側尾方に引く(呼息の補助)

○肋間動脈:各肋間動脈は、肋間静脈と肋間神経とともに対応する肋骨の下縁に沿って走行する。

○肋間神経:各肋骨の下に1本ずつ片側に計12本の肋間神経が存在する。第12肋骨の下の神経は肋下神経と呼ばれる。外肋間筋、内肋間筋、最内肋間筋、肋下筋、上後鋸筋、下後鋸筋と胸壁の前面と側面の皮膚を支配している。(胸郭のインナーマッスル)

機能と影響

上後鋸筋

・上後鋸筋の下には脊柱起立筋、多裂筋があり、上には大・小菱形筋、僧帽筋の順にある。

・僧帽筋、小菱形筋、大菱形筋、外肋間筋との筋連結がある。→上後鋸筋の廃用があると大・小菱形筋、僧帽筋の過緊張、胸郭の硬さに繋がる。

下後鋸筋

・下位肋骨と脊柱を連動させ、上体を水平に回旋するときの補助。

・スポーツ時や呼吸困難などの呼吸の需要が上がったときに働く。

・外腹斜筋、前鋸筋、広背筋、外肋間筋と連結がある。→下後鋸筋の廃用があると広背筋、外肋間筋の過緊張、下部胸郭の硬さに繋がる。

関連症例

上後鋸筋

・スパイラルラインとの関連性あり。

・関連臓器:肝臓

→肩との関連性あり。

→お酒、甘いもの、服薬が多い。

・肩甲骨後面や肩関節、上腕と前腕の前面、後面の痛み。

下後鋸筋

・マラソンなどの激しく呼吸する競技などで、下後鋸筋が牽引されることで下後鋸筋に問題が生じやすい。

・腰痛との関連。

・関連臓器:膵臓、脾臓

→背中の痛みと関連あり。

→免疫との関連あり。

触察法

・上後鋸筋

上縁→第5頚椎棘突起と第2肋骨角とを結ぶ線。

下縁→第2胸椎棘突起と第5肋骨角とを結ぶ線。

・下後鋸筋

上縁→第11胸椎棘突起と第9肋骨角とを結ぶ線。

下縁→第2腰椎棘突起と骨盤中央(ASISとPSISの間)と第12肋骨の交点とを結ぶ線。

※第7胸椎に第9肋骨、第1腰椎に第12肋骨、肩甲骨下角から第1胸椎を触診。

評価とアプローチ

評価

・上後鋸筋

圧痛、体幹の可動域(特に回旋)、呼吸(回数、深さ、呼吸時の胸郭の可動性)

・下後鋸筋

圧痛、体幹の可動域(特に回旋)、呼吸(回数、深さ、呼吸時の胸郭の可動性)、片脚立位

アプローチ

・上後鋸筋

肢位:腹臥位、または座位。

硬結部にコンタクトし、呼気時にゆっくりと圧を加える。→硬結部が緩む感覚があれば、そこで吸気に合わせて手を離す。筋に対して垂直方向へ動かしても良い。※深さを意識すると効果↑(僧帽筋)

肩の高さが高い方に、圧痛がみられやすい。

・下後鋸筋

肢位:腹臥位、または座位。

硬結部にコンタクトし、呼気時にゆっくりと圧を加える。→硬結部が緩む感覚があれば、そこで吸気に合わせて手を離す。筋に対して垂直方向へ動かしても良い。※深さを意識すると効果↑(広背筋)

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