咀嚼筋(咬筋と側頭筋と内外側翼突筋)の起始停止と作用!顎関節の運動は?

咀嚼筋群(masticatory muscles)とは

咀嚼筋群は頭蓋骨から下顎骨に張り、咀嚼運動を行う。咬筋(masseter m)、側頭筋(temporalis m)、外側翼突筋(lateral pter-ygoid m)、内側翼突筋(medial pterygoid m)4筋がある。三叉神経の第3枝に支配される。

外側翼突筋は下顎を前に引き、開口作用をもつが、それ以外の3筋は閉口作用をもつ。なお、顎を開く運動(開口)は、主として頸部の舌骨筋群によって行われる。

起始停止と作用

咬筋(masseter m)

起始:浅側頬骨弓の前2/3の下縁と内面、深側頬骨弓の後ろ2/3の下縁、一部は側頭筋の停止腱。

停止:下顎骨の下顎角の外面、浅側は咬筋粗面の下部、深側はその上方。

走行:浅側は強い腱でおこる。全体はほぼ長方形で浅側は後下方に向かう。深側はほぼ縦に下る。

神経:下顎神経(三叉神経第3)の咬筋神経V 3

作用:下顎骨を上げて、歯をかみ合わせる(閉口)

側頭筋(temporalis m)

起始:側頭窩と側頭筋膜の深葉の内面

停止:下顎骨の筋突起と下顎枝の内面

走行:厚い筋束が側頭窩を満たして、下前方に向かって集まる。強い腱で停止部を囲んで固く付く。

神経:下顎神経の深側頭神経V 3

作用:下顎を引き上げて閉口し、歯を強くかみ合わせる。後部は下顎骨を後上方へ引く。

外側翼突筋(lateral pter-ygoid m)

起始:上部蝶形骨の側頭下稜、蝶形骨大翼の側頭下面、下部翼状突起外側板

停止:上部顎関節円板、関節包、下部下顎骨の下顎頸の翼突筋窩

走行:下顎枝の内側で側頭下窩にある。ほぼ水平に後外方に向かって集まる。

神経:下顎神経の外側翼突筋神経V 3

作用:下顎骨を前方へ引く。片側が働くと下顎骨の前部を反対側へ動かす。両側が働くと下顎骨全体が前方へ動く。また開口時に両側が働くと、両側の下顎頭が前方へ動く。

内側翼突筋(medial pterygoid m)

起始:蝶形骨の翼状突起後面の翼突窩、これに接する上顎骨の一部と翼状突起外側板の下端。

停止:下顎角内面の翼突筋粗面

走行:外側翼突筋の下内側で、後外下方へ走る。

神経:下顎神経の内側翼突筋神経(内側面から筋に入る)V 3

作用:下顎骨を引き上げて閉口し、歯を強くかみ合わせる。片側が働くと下顎骨が反対側に動く。

顎関節の運動

顎関節は機能的には2つの関節が組み合わさったものである。その1つは下顎頭と関節円板との間の蝶番関節であり、もう1つは関節円板と下顎窩との間の平面関節(滑走関節)である。顎関節は、咀嚼や発声に関与する以下の運動を行う。

1、下制(depression)と挙上(elevation)

下顎骨の下制と挙上は下顎頭と関節円板との間、すなわち下関節腔(蝶番関節)で生じる蝶番運動である。

2、前進(protrusion)と後退(retraction)

下顎骨の前進は、下顎窩と関節円板との間、すなわち上関節腔(平面関節)において、下顎頭と関節円板とが一体となって下顎窩を前方に進む滑走運動(sliding)である。後退はその反対方向の運動である。

3、側方移動(lateral shift)

これは一側の下顎骨前進運動と、反対側における下顎骨後退運動が同時におこることによりもたらされる。この運動はピーナツやおかきなどを臼歯部で磨りつぶす際の、左右交互におこる臼磨運動(grinding movement)である。

顎関節の運動で特に重要なものは口の開閉運動である。開口の場合は、下関節腔における下制(蝶番運動)と上関節腔における前進(滑走運動)とが同時におこる。他方、閉口の場合は、開口とは反対に下顎骨の挙上と後退が同時におこる。

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