下腿屈曲群(後脛骨筋と腓腹筋と膝窩筋など)の起始停止と作用は?触察法やアプローチの紹介!

下腿屈筋群とは

下腿には、前面の伸筋群、後面の屈筋群のほか、外側に、足あるいは趾の屈伸に直接かかわらない腓骨筋群がある。このうち屈筋群が特に発達している。伸筋群は深腓骨神経支配、屈筋群は脛骨神経支配で、腓骨筋群は浅腓骨神経支配である。

下腿の後部には、浅側に2頭をもつ腓腹筋(gastrocnemius m.)とヒラメ筋(soleus m.)、足底筋(plan-taris m.)と膝窩筋(popliteus m.)があり、深側に、後脛骨筋(tibialis posterior m.)、長趾屈筋(flexor digitorum longus m.)、長母趾屈筋(flexor hallucis longus m.)がある。腓腹筋とヒラメ筋を合わせて、下腿三頭筋(triceps surae m.)という。

腓腹筋の内・外側頭は、それぞれ大腿骨の内・外側上顆からおこり、ヒラメ筋の浅側を下行する。ヒラメ筋は下腿の骨の後部からおこる。これらの筋の腱は合流して人体で最も太い腱である踵骨腱(calcaneal tendon ):アキレス腱(Achilles tendon)になる。膝関節の屈曲と足の底屈を行う。ヒラメ筋の上部に小さな足底筋があり、長い腱は踵骨腱に合する。膝窩筋は腓腹筋、足底筋のさらに深側にある。

ヒラメ筋のさらに深側に長母趾屈筋、後脛骨筋、長趾屈筋が、外側からこの順にほぼ並列している。最も内側からおこる長趾屈筋の腱の深側を、後脛骨筋の腱、次いで長母趾屈筋の腱が通過し、3筋の腱は内果の後ろを回って足根管を通り、足底に進む。後脛骨筋は足の内側縦足弓(アーチ)の保持に重要である。足底部の長趾屈筋腱には足底方形筋が付着し、趾の適正な屈曲が行われる。

起始停止と作用

腓腹筋(gastrocnemius m.)

起始:外側頭→大腿骨外側上顆、内側頭→大腿骨内側上顆

停止:踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部

神経:脛骨神経(L4~S2)

栄養血管:後脛骨動脈

作用:足関節の底屈、踵の挙上、膝関節の屈曲

ヒラメ筋(soleus m.)

起始:腓骨頭と腓骨後面、脛骨のヒラメ筋線と内側縁、腓骨と脛骨間のヒラメ筋腱弓

停止:踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部

神経:脛骨神経(L4~S2)

作用:足関節の底屈、踵の挙上

足底筋(plan-taris m.)

起始:大腿骨外側上顆および膝関節包

停止:踵骨隆起

神経:脛骨神経(L4~S1)

作用:足関節の底屈、膝関節の屈曲

膝窩筋(popliteus m.)

起始:大腿骨外側上顆の外側面

停止:脛骨後面上内側部(ヒラメ筋線より上)(広い)

神経:脛骨神経(L4~S1)

作用:膝関節の伸展、内旋

後脛骨筋(tibialis posterior m.)

起始:下腿骨間膜の後面上半、下腿骨間膜に接する脛骨と腓骨(広い)

停止:舟状骨粗面、内側楔状骨、中間、外側楔状骨、立方骨、第2~3中足骨底

神経:脛骨神経(L5~S2)

栄養血管:腓骨動脈

作用:足の内がえし、足関節の底屈

長趾屈筋(flexor digitorum longus m.)

起始:脛骨後面

停止:第2~5末節骨底

神経:脛骨神経(L5~S2)

作用:足趾の屈曲、足関節の底屈

長母趾屈筋(flexor hallucis longus m.)

起始:腓骨体後面(内側稜と後縁との間)、後下腿筋間中隔の下半(広い)

停止:第1~3趾の末節骨の底、第4趾にも停止することがある。

神経:脛骨神経(L5~S2)

作用:第1~3(4)趾の屈曲、足関節の底屈

※後脛骨動脈→膝窩動脈から前脛骨動脈と後脛骨動脈に分かれる。腓骨動脈を分岐する。

※腓骨動脈→後脛骨動脈の最大の枝で、腓骨の後側に沿って下降し、腓骨の近くの筋を栄養する。

機能と影響

1、腓腹筋

・スーパーフィンシャルバックラインとの関連。

・腰痛、骨盤の歪み(開き)

・膝関節と下腿後面、土踏まずなど。

2、ヒラメ筋

・かかと周囲、仙骨後面、下腿後面、荷重不可、夜間のふくらはぎの痛み、足の浮腫など。

3、後脛骨筋

・後脛骨筋の低下→腓腹筋tone↑→血液循環の低下→下腿のむくみ、しびれなどがみられる。

・腎経との関連。

・膝の痛み→膝窩筋とのれん。

・腰痛、頸部痛、胸郭の硬さ、顎の歪みなど、多様な症状の原因となる。

触察法

・腓腹筋の外側頭の外側縁

1、被検者は腹臥位、触察者は触察部位の外側方に位置する。

2、外側頭の遠位縁を、腓骨頭の後端を指標にして、外側近位方続いて近位方へたどる。

※抵抗に対し足関節を自動底屈させると触知しやすい。

※足関節を自動背屈させながら、抵抗に対し膝関節を自動屈曲させると、ヒラメ筋が弛緩した状態で腓腹筋が収縮し、両者の境界を触知しやすくなる。

・腓腹筋の内側頭の前縁

1、被検者は触察する側の下肢を下にした側臥位。触察者は触察部位の前方に位置する。

2、内側頭の遠位縁を、脛骨の後内側縁の近位1/4の部位を指標にして前近位方へたどる。続いて、膝窩部を指標にして、後近位方へたどる。

※抵抗に対し足関節を自動底屈させると触知しやすい。

ヒラメ筋

1、被検者は腹臥位。触察者は触察部位の外側方に位置する。

2、ヒラメ筋の前外側縁:踵骨のすぐ近位方で、外側方からアキレス腱の前縁を確認し、これを腓骨頭の後端を指標にして前外側近位方へ、続いて近位方へたどる。

3、被検者は触察する側の下肢を下にした側臥位。触察者は触察部位の前方に位置する。

4、ヒラメ筋の前内側縁:踵骨のすぐ近位方で、内側方からアキレス腱の前縁を確認し、これを脛骨の後内側縁の中央部を指標にして前内側近位方へ、続いて脛骨の後内側縁の近位1/4の部位を指標にして近位方へたどる。

※抵抗に対し足関節を自動底屈させると触知しやすい。

5、被検者は腹臥位。触察者は触察部位の遠位方に位置する。

6、ヒラメ筋の内側近位縁:下腿部の後方から、脛骨の後内側縁の近位1/4の部位と腓骨頭とを結ぶ線に指を置き、前方へ圧迫しながら指を外側遠位方へ移動させる。

※膝関節を屈曲位に保持し、足関節を自動底屈させると触知しやすい。

・膝窩筋

1、被検者は腹臥位。触察者は触察部位の外側方に位置する。

2、膝窩筋の遠位縁の想定位置:後方へ投影した脛骨の後内側縁の近位1/4の部位と腓骨頭とを結ぶ線を確認する。

3、膝窩筋の近位縁の想定位置:脛骨の内側顆の後遠位縁と大腿骨の外側上顆から1横指遠位方の部位とを結ぶ線を確認する。

評価とアプローチ

・腓腹筋

評価

MMT、筋tone、前脛骨筋の緊張、体幹前屈、PSISの開きなど。

アプローチ

肢位:背臥位

膝を立てて行う。下腿後面の近位部から遠位部にかけて左右に揺らす。1箇所5~10回程度、隙間のないように把持する。特に下腿1/2部分に痛みがみられやすい。

・膝窩筋

アプローチ

膝を立てて行う。脛骨後面上1/3部分を脛骨に沿ってほぐす。

・後脛骨筋

評価

MMT、足関節のROM、片脚立位、腰や肩などの筋tone、腓腹筋tone

アプローチ

膝を立てて行う。硬結部にコンタクトし圧痛がなくなるまで待つ。(内くるぶしを目安に下腿遠位1/3)圧は強さは変えず、息を吸う時に離す。

・長母趾屈筋

アプローチ

膝関節屈曲位で、母指球の真下に指2本把持する。もう片手は下腿外側部を近位部→遠位部へ徒手。筋に対し、横断方向に揺らしながら行う。

ストレッチ

・腓腹筋1

肢位:背臥位。膝を伸展位で固定し、股関節を屈曲させ下肢を挙上させる。そこから、足関節を背屈する。

・腓腹筋2

肢位:背臥位。手掌で踵部を把持し、前腕で足底を支え、頭側に向かって背屈させる。膝関節は伸展位で行う。

・ヒラメ筋1

肢位:腹臥位。膝関節を90°屈曲位で行う。足底の前足部を床方向へ押す。

・ヒラメ筋2

肢位:背臥位。手掌で踵部を把持し、前腕で足底を支え、頭側に向かって背屈させる。膝関節は屈曲位で行う。

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