縫工筋(sartorius m.)とは
大腿の筋は、前面にある伸筋群、内側にある内転筋群、後面にある屈筋群に分けられる。それぞれ、主として大腿神経、閉鎖神経、坐骨神経の支配を受ける。
伸筋群には、縫工筋(sartorius m.)と大腿四頭筋(quadriceps femoris m.)がある。
縫工筋は上前腸骨棘からおこり、大腿の前面を斜めに下内側方に走り、脛骨上端の内側につく。縫工筋は細長いベルト状で、体肢の筋のなかで最も長い。停止部は、薄筋、半腱様筋とともに鵞足を形成する。縫工筋は大腿の前面にあり、大腿四頭筋とともに大腿神経の支配を受けるので大腿の伸筋群に分類されるが、股関節・膝関節に対してともに屈曲作用をもつ。
起始停止と作用
起始:上前腸骨棘
停止:脛骨粗面の内側(鵞足を形成)
神経:大腿神経(L2、L3)
栄養血管:大腿動脈
作用:股関節の屈曲と外転と外旋、膝関節の屈曲
機能と影響
・歩行時にプレスウィング~イニシャルスウィングで筋活動あり。
・人体最長の筋肉→テニスや卓球、バスケなど左右のクイックが多いスポーツで損傷しやすい。→運動時の股関節痛、膝関節の痛み(内側)。
・鵞足炎のなかで原因になりやすい。
触察法
縫工筋の起始付近の筋腹、縫工筋の中央部付近の筋腹、縫工筋の停止付近の筋腹の順に触察する。
縫工筋の起始付近の筋腹
1、触察者は触察部位の外側方に位置する。
2、上前腸骨棘の前下端から2横指遠位方の部位に指を置き、後方へ圧迫しながら指を内側方へ移動させる。
※約2横指の幅の筋腹を横断するのを確認する。
※股関節屈曲・外転・外旋位,膝関節屈曲位で下肢を自動挙上させると、観察および触知しやすい。
3、2で確認した筋腹を、上前腸骨棘を指標にして近位方へたどる。
縫工筋の中央部付近の筋腹
1、触察者は触察部位の内側方(反対側)に位置する。
2、大腿部の長軸長の中央部で、内側方からみた大腿部の前後径の中央部に指を置き後外側方へ圧迫しながら指を前外側遠位方~後内側近位方へ移動させる。
※強く圧迫すると、1横指ほどの幅の硬い筋腹として触知できる。圧迫力を弱めると、2横指ほどの幅の柔らかい筋腹として触知できる。
※股関節屈曲・外転・外旋位膝関節屈曲位で下肢を自動挙上させると、観察および触知しやすい。
3、2で確認した筋腹を、1で確認した起始付近の筋腹まで、外側近位方へたどる。
縫工筋の停止付近の筋腹
1、触察者は触察部位の内側方(反対側)に位置する。
2、大腿骨の内側上顆に指を置き、外側方へ圧迫しながら指を後方へ移動させる。
※約2横指の幅の筋腹を横断するのを確認する。ただし、この付近の縫工筋の後縁の筋腹は薄く、また薄筋の停止腱を覆うことが多いため、厳密な後縁の触知は困難な場合が多い。
3、2で確認した筋腹を、縫工筋の中央部付近の筋腹まで、近位方へたどる。また、脛骨粗面のすぐ内側方の部位を指標にして、遠位方へたどる。
※大腿部の長軸長の中央部より遠位方の領域では、縫工筋の後縁は薄筋の前縁付近に位置するが、薄い筋腹がこれを覆うことが多く、厳密な後縁の触知は困難な場合がある。
評価とアプローチ
評価
MMT、膝関節の痛みや安定性、片脚立位、片脚立位での屈伸運動時または、片脚を前方へ出し荷重させた時の膝の向き、荷重時のラテラルスラスト、筋圧痛など。
アプローチ
ASISと鵞足部を近づけるよう(股関節内旋、膝関節外旋方向へ)に触れ、鵞足部を10秒ほど揺らす。
ストレッチ
肢位:腹臥位
方法:非伸長側の下肢はベッド側方から下ろし、足底を床につける。骨盤は代償動作がでないよう固定しておく。伸長側の下肢は、膝関節屈曲させ、足部を外側へ床方向に押す。
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