血圧(blood pressure)
血圧(blood pressure )は血管内圧のことであり、血液が血管壁に与える圧力を意味する。また、バイタルサインの一指標である。
血圧の種類
・血圧定には直接法と間接法がある。
・直接法は動脈内に直接針を挿入し、これをトランスジューサーに接続して圧を測定する。
・直接法はCCU(coronary care unit )などの患者で正確な血圧を必要とするときに用いられる。
・間接法は皮膚上にマンシェットを巻き、間接的に動脈を圧迫して測定する方法である。
・間接法は一般的に用いられており、以下、間接法について説明する。
・血圧には最大血圧(収縮期血圧)、最小血圧(拡張期血圧)、脈圧、平均血圧がある。
1、最大血圧(maximal pressure)
・最大血圧は心収縮が最大になったときの血管内圧で、最高血圧や収縮期血圧ともいう。
2、最小血圧(minimal pressure)
・最小血圧は心筋が弛緩し、心臓が拡張した状態で、血管内圧が最低になった状態である。最低血圧や拡張期血圧ともいう。
3、脈圧(pulse pressure)
・脈圧は最大血圧と最小血圧の差をいう。
4、平均血圧(mean blood pressure)
・平均血圧は脈圧の1周期全体を通して平均値を示すものであり、臨床的には最小血圧に脈圧を1/3を加えたものを大体の目安とする。
血圧測定
血圧計(sphygmomanometer )
・血圧測定器具は血圧計であり、液柱型、弾性型、電子血圧計などがある。
①液柱型血圧計
・これにはRiva-Rocci型水銀血圧計がある。
・この血圧計はマンシェット(圧迫帯)に入る空気圧によって血圧を圧迫し、その圧を水銀の重さとつり合わせることにより測定するものである。特徴は測定誤差が少なく、正確な点である。
②弾性型血計
・これにはTycos型アネロイド型携帯血圧計がある。
・この血圧計はマンシェットに入る空気圧を弾性体とつり合わせることにより、その弾性体の変形を歯車やテコで拡大し、指針に接続し表示するものである。特はやや正確さにかけるが、携帯に便利な点である。
・その他、近年、電子式の血圧計が開発され、血圧の高さをデジタル表示したり、聴診音を電子音やランプの点滅で表示するものなどがある。
③マンシェット
・上腕部(上腕動脈)測定用として、JIS規格で幅13cm以上(14cmまで)、長さ23cm以上(25cmまで)が用いられる。また、下腿部(膝窩動脈)測定用としては幅18cm、長さ50cmのものが用いられる。
測定部位
・通常は右上腕部で、肘関節を伸展した状態、心臓とほぼ同じ高さに保持して測定する(左上腕部でも測定することもある)。
測定方法
測定には聴診法と触診法がある。
①聴診法
・患者には腰掛け坐位をとらせ、右上腕部(または左上腕部)の衣類を脱がせ、マンシェットの下縁が肘窩の上方2~5cmにくるようにして、マンシエットを巻き、聴診器のチェストピースの膜面側を、マンシェットの下縁よりやや下の上腕動脈の触れる位置に軽く当てる。
・次に、ゴム球を押してマンシェットのゴム囊内圧を急上昇させる。聴診音は、はじめ聴こえないがやがて聴こえはじめ、再度聴こえなくなる。聴こえなくなったところより20~30mmHg高いところまで上昇させる。
・次に、ゴム球のバルブを少しずつねじって空気をぬいていく。徐々に内圧を下げるとある点で聴診音が聴こえはじめる。この点をSwann の第1点といい、最大血圧と一致する。その後内圧を1拍に2~3mmHg程度の速さで下げていくと、ある点で突然聴診音が弱くなる。この点をSwann の第4点という。さらに下げていくと聴診音が聴こえなくなる。
・この点をSwannの第5点といい、Swannの第5点までに聴こえる聴診音をKorotkoff音という。
・聴診法は最大血圧と最小血圧が正確に測定できる。
・測定値の記録は、たとえば、最大血圧120mmHg、最小血圧80mmHg、または120/80と表記する。また、第5点が0で、第4点が60のときは120/60=0とする。Riva– Rocci型水銀計を用いたときには値の後にRRをつけることもある。
・コロトコフ音
第1点(音の出現)→最高血圧
第1相は小さな音で始まり、スワン(またはコロトコフ)の1点とよぶ。
第2相は低い振動性の濁(雑)音で始まり、スワン(またはコロトコ)の2点とよぶ。
第3相は強い叩打音で始まる。濁音は消失し、スワン(またはコロトコフ)の3点とよぶ。
第4相は急音が弱くなり、くすんだ弱い叩打音で始まる。スワン(またはコロトコフ)の4点とよぶ。
音の消失する点をスワン(またはコロトコフ)の5点とよぶ。
第5点(音の消失)→最低血
②触診法
・触診法は、マンシェットの巻き方やゴム球への空気圧の加え方は聴診法と同じであるが、触診の代わりに、健側の橈骨動脈を触診する。マンシェットの空気圧を上げていくと、はじめは脈拍が触れているが、やがてその脈拍の消失するところより20~30mmHg高いところまで圧を上昇させる。
・次に、ゴム球のバルブをねじり、1拍に2~3mmHg程度の速さで下げていくと脈拍が触れるようになる。この点の内圧が最大血圧と一致する。さらに、圧を下げても脈拍は触れつづける。
・触診法では最大血圧のみ測定できる。
測定上の注意点
・測定は2度繰り返し、落ち着いたところの値をとる。
・患者の姿勢は坐位で測定するのが原則であり、特に安静を要するときには背位で測定する。一般に背臥位の値が高くなる。
・測定値は左右の上腕部で差が出る。一方のみ測定するときには右上腕部で測定する。
・できるだけ同一条件のもとで測定する。特に運動、食事、精神的緊張などの影響を少なくすることが大切である。
・環境条件としては室温15℃以上を原則とする。
正常血圧
・健常者の血圧は常に一定しているものではない。いろいろな条件によって変動する。
・したがって正常値といってもある範囲内の目安を示すものである。
・一般に女性は男性より5~10mmHg低い。
・また、40歳以上になると年齢とともに多少の上昇をみる。
・日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインは、成人健常者の正常値を以下のように定めている。
・分類
至適血圧:<120かつ<80
正常血圧:<130かつ<85
正常高値血圧:130~139または85~89
血圧の異常
・血圧異常には血圧の高いものを高血圧(hypertension)といい、低いものを低血圧(hypotension)という。
・日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインは以下のように定めている。
・血圧の異常の因子は、動脈硬化、大動脈弁狭窄、大動脈炎、大動脈瘤、腎疾患、甲状腺機能障害がある。
・分類
Ⅰ度高血:140~159または90~99
Ⅱ度高血圧:160~179または100~109
Ⅲ度高血圧:≧180または≧110
(孤立性)収縮期高血圧:≧140かつ<90
対象者別降圧目標
・家庭血圧測定は治療継続率を向上させるとともに、降圧薬治療における過剰あるいは不十分な降圧を自己チェックする機能があり、臨床的価値が高いと評価され、推奨されている。
・一般に診察室血圧と家庭血圧には5mmHg程度の差異があり、診察室血圧の高血圧基準は収縮期血圧と拡張期血圧がそれぞれ140mmHgと90mmHg以上であり、同様に家庭血圧では135mmHgと85mmHg以上としている。
・血圧に関連して、若年者・中年者、高齢者、糖尿病患者・慢性腎病患者・心筋梗塞後患者、脳血管障害患者の4群に対して降圧目標が定められ、心血管の発症リスクが高い場合には、高血圧基準以下でも降圧薬などを用いる治療対象とされている。
若年者・中年者:130/85mmHg未満
高齢者:140/90mmHg未満
糖尿病患者・慢性腎臟病患者・心筋梗塞後患者:130/80mmHg未満
脳血管障害患者:140/90mmHg未満
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