バイタルサイン(体温と脈拍と呼吸数)の測定方法は?正常値や異常値は?

体温(body temperature)

・体温(body temperature)は、身体内部の核心温度であり一様な恒温状態を保ち、動脈を流れる血液の温度で体内温度の指標となる。

・それに対して体表の外殻温度は皮膚温ともいわれ、外部環境の温度変化に応じて放散の調節を行っている。

・体温は、体内で生産される熱(熱生産)と体表で喪失する熱(熱放散)のバランスの指標である。

・外気温の変化や身体活動によっても、体温はわずかな範囲での調節が行われ恒常性を保ち、生命持に必要な代謝活動を示す。また、バイタルサインの一指標となる。

正常体温

・日本人の体温は、腋窩温で35.5~37.5℃に分布するが、一般には36.5℃前後である。

測定部位

・体温を測定する最も一般的な部位は、腋窩温であり、その他、口腔温、直腸温、耳内温がある。

・腋窩温は、測定が簡便であるが、核心温よりやや低い温度である。

・それに対して、ロ腔温、直腸温や耳内温は、核心温に近い温度が測定できる。

測定方法

体温計

・体温は、体温計で測定する。体温計には、水銀体温計と電子体温計がある。

・水銀体温計は、棒状のものと平型のものがあり、腋窩温では一般的に平型のものが用いられる。

測定方法

・体温計を腋窩前下部から後上方に向けて45°の角度で挿入し、水銀体温計の水銀槽あるいは、電子体温計感温部が腋窩の最も凹んだ部分に当たるようにする。上腕は体側に下垂し、腋窩腔を密着させる。

測定時間

・水銀体温計では、30秒計、1分計、3分計があり、電子体温計では、ピーと電子音が鳴るまで測定する。

測定の注意

・腋窩部の発汗があるときは、よく拭き取る。

・水銀温度計では、水銀が35℃以下であるが、水銀の切れがないかを確認する。そのようなときはよく振って、35℃以下で切れ目がない状態にする。

・電子体温計では、温度表示が0になっているか確認する。0でないときには、柄の頭のボタンを押して0に戻す。

・麻痺のあるときには、健側で測定する。健側と麻痺側で差が見られることがある。

・測定終了後、水銀体温計は、水銀を35℃以下に下げておく。電子体温計は、温度表示を0にしておく。また、体温計はアルコール綿で消毒しておく。

体温調節中枢

・体温調節中枢は視床下部にある。

体温の呼称

その人の平熱やインフルエンザ、ウイルス感染等を知ることができる。

・低温(虚脱熱):36.0℃未満

・平熱(健常熱):36.0~37.0℃未満

・軽熱(微熱):37.0~38.0℃未満

・中等熱(中熱):38.0~39.0℃未満

・高熱:39.0~40.5℃未満

・過熱(過高熱):41.5℃以上

体温変動

・日内リズム:午前2~4時の朝方が低く、午後2~6時のタ方が高い。

・季節変動:気温の低下とともに低下し、気温の上昇で、高くなる。

・食後の上昇:食後30~60分で上昇。

・入浴:入浴後20~30分で上昇、60分で平常値。

・運動:激しい運動では、39℃にも上昇する。

・精神的ストレス:1~2℃の上昇。

・女性ホルモン:排卵日に体温の下降がみられる。

脈拍(pulse)

脈拍(pulse)は心臓の収縮によって血液が末梢血管へ送り出されることによる、血管の拡張と縮小によって生じるものである。脈拍は血管の状態や心臓機能を知るうえで、最も簡単な検査であり、バイタルサインの一指標である。正常であれば、脈拍と心拍数はほぼ同じである。

脈拍の触診

・脈拍の触診部位は動脈が皮膚の表面近くにあり、触知しやすい橈骨動脈や浅側頭動脈などの部位で診る。

・示指、中指、環指の三指の掌面を皮膚面に接着して、次のような項目を触知する。

脈拍数、リズムの状態、脈拍の大小、脈拍の緊張度、脈拍の遅速などである。

脈拍数(pulse rate)

・成人健常者の脈拍数は1分間で60~85拍、平均で72拍である。

・乳幼児は120拍前後であり、年齢が高くなるに従い減少する。

・老人では60拍前後のものもいる。

・脈拍は睡眠中は少なく、運動時は増加する。

脈拍数の取り方

一般には15秒間の拍数を取り、それを1分間に換算する。

脈拍数の変化

・頻脈(pulsus frequens )

頻脈は成人で1分間に100以上のものをいう。

発熱時、貧血、心不全、出血、甲状腺機能亢進、心筋炎などの症状にみられる。

・徐脈(pulusus rarus)

徐脈は成人では1分間に60以下のものをいう。

脳圧亢進(迷走神経刺激)や甲状腺機能低下などの症状にみられる。

リズムの異常

・健常者の脈拍は一定のリズムをもって律動する。

・これを整脈(pulsus regularis)という。

・これに対して、脈拍の間隔が一定でないものを不整脈(pulsus irregularis)という。

・不整は心疾患の重要な所見となるので、脈拍の触診の他に聴診や心電図による診察が必要である。

・不整の種類には次のようなものがある。

1、洞性不整脈または呼吸性不整脈

・これは呼吸のリズムによってリズムが乱れるもので、吸気時に早くなり、呼気時に遅くなる。

・その原因は迷走神経の興奮性が変化するためであり、病的な意味はない。

2、期外収縮性不整脈

・これは1つの心拍から次の心拍までの間で、早期に心拍がおこるもので、脈拍は非常に弱く、正常脈拍の直後に起こるので、触診では脈拍の脱落として触知し、また、脈拍の結滞として触知される。

・期外収縮は早期収縮ともいう。

・期外収縮はその刺激となる部位によって、①洞性、②心房性、③心室性の3つのタイブがあり、臨床的には心室性がよくみられる。

3、絶対性不整脈(恒久性不整)

・これは脈拍のリズム、各脈拍間の間隔、脈拍の強さや大きさが不同で不規則な脈拍をいう。

・絶対性不整脈は心房の拍動数と心室の拍動数が一致せず、脈拍数は著しく増加する。

・心房粗動:1分間200~400拍

・心房細動:1分間400~600拍

・絶対不整脈の原因としては冠動脈疾患や僧房弁狭窄などが挙げられる。

脈拍の大きさ

脈拍の振幅の大きさは、心の収縮期と拡張期の間で動脈壁の振幅によって起こるものである。振幅の大きさにより大脈と小脈がある。

・大脈:大脈は振幅の大きいもので、大動脈弁閉鎖不全、脚気、甲状腺機能亢進症、高熱時などにみられる。

・小脈:小脈は振幅の小さいもので、大動脈弁狭窄症などにみられる。

脈拍の緊張度

・脈拍の緊張度は皮膚上から動脈に圧力を加えて、動脈の硬さを診るものである。

・緊張度の高いものを硬脈、低いものを軟脈という。

・血圧测定の前に大まかな血圧の目安として診るとよい。

脈拍の遅速

・脈拍の遅速は1拍の指に触れる時間の長さを診る。

・脈拍が急に大きくなり、急に小さくなるものを速脈という。

・ゆっくりと大きくなり、ゆっくりと小さくなるものを遅脈という。

呼吸数

・呼吸は、安静時でも多少の揺らぎがあるものの規則的であり、吸気時間(息を吸っている時間)と呼気時間(息を吐いている時間)はほぼ同じである。(一般に呼吸周期では吸息の後のポーズ、呼息の後の休止期が含まれているため、呼気時間が長いと思われる)

・吸気時間の延長は息が吸いにくい状態であり、上気道の閉塞を意味している(例えば、痰の貯留)。

・呼気時間の延長は息が吐きにくい状態であり、末梢気道の閉塞が考えられる(例えば、COPD)。

・呼吸数は成人では安静時12~20回/分が正常範囲。(新生児では40回/分程度)

・頻呼吸は25回/分以上。(新生児は60回/分以上)

・徐呼吸は11回/分以下。(新生児は20回/分以下)

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