大腿筋膜張筋の起始停止や作用は?触察やアプローチ法の紹介!

大腿筋膜張筋(tensor fasciae latae m.)とは

下肢帯の筋(muscles of the pelvic region)は骨盤の周辺にある筋群で、骨盤腔の内壁をつくる内寛骨筋群(muscles of the iliac region)と、殿部にある外寛骨筋群(muscles of the gluteal region)に区別される。

外寛骨筋群には、比較的大きな殿筋群と、深側の小さな筋よりなる外旋筋群がある。殿筋群には大殿筋(gluteus maximus m.)、中殿筋(gluteus medius m.)、小殿筋(gluteus minimus m.)、大腿筋膜張筋(tensor fasciae latae m.)がある。大腿筋膜張筋は大腿最外側に位置し、大腿筋膜内に包まれ腸脛靱帯に移行する。

起始停止と作用

起始:上前腸骨棘

停止:腸脛靭帯を経て脛骨外側顆前面の粗面

神経:上殿神経(L4、L5)

栄養血管:上殿動脈

作用:股関節の屈曲、内旋、外転、膝関節の伸展

※上殿動脈:内腸骨動脈からの最大の枝で、梨状筋を通過し外に出て浅枝、深枝に分かれる。

浅枝→大殿筋と中殿筋の間を走行し、大殿筋を栄養する。

深枝→中殿筋と小殿筋の間を走行し、中殿筋と小殿筋を栄養する。

※上殿神経:上殿動脈と並走して梨状筋の上部と中殿筋と小殿筋の間を通過し、大腿筋膜張筋に終わる。

機能と影響

・作用→股関節の屈曲、外転、内旋と下腿の外旋、膝関節の伸展(膝関節30°以上の屈曲位から)

・短縮でOver test陽性となる。

・腸脛靭帯炎(ランナー膝)

・トリガーポイント好発部位は大腿部外側面である。

・ラテラルラインとの関連。→歩行時の安定性(スラスト)、膝内側の痛み。

・変形性膝関節症などで伸展制限がある場合、大腿筋膜張筋・腸脛靭帯の作用が強くなる。→外側広筋や膝蓋支帯が緊張し、さらに屈曲時痛や運動時痛(大腿外側や前面)が出現。

触察法

大腿筋膜張筋の前縁

1、触察者は触察部位の外側方に位置する。

2、上前腸骨棘の前下端から2横指尾方の部位に指を置き、後方へ圧迫しながら指を外側方へ移動させる。

※下腿部への抵抗に対して下肢を自動挙上(股関節屈曲・膝関節伸展)させると、大腿筋膜張筋と縫工筋との間のくぼみを観察できる。

3、2で確認した筋腹の前縁を、上前腸骨棘の内側端を指標にして内側頭方へ、また腸脛靱帯の前縁を指標にして外側尾方へたどる。

大腿筋膜張筋の後縁

1、触察者は触察部位の外側方に位置する。

2、上前腸骨棘の前下端から2横指後頭方の部位と、大転子の前遠位端とを結ぶ線に指を置き、内側方へ圧迫しながら指を前方へ移動させる。

大腿筋膜張筋の後遠位縁

1、触察者は触察部位の外側方に位置する。

2、1で確認した大腿筋膜張筋の前縁の遠位端(上前腸骨棘から脛骨の外側顆までの距離の近位1/3の部位)と2で確認した大腿筋膜張筋の後縁の遠位端(上前腸骨棘から脛骨の外側顆までの距離の近位1/4の部位)との間に指を置き、前近位方~後遠位方にさする

※抵抗に対し股関節を自動外転させると、触知しやすい。

評価とアプローチ

評価

MMT、筋緊張、関節可動域(股関節内転)、片脚立位など

アプローチ

肢位:側臥位、股関節屈曲・内旋位

筋腹部分は横断方向にアプローチする。→筋緊張が落ちない場合は、腸脛靭帯部分へ手のひら全体でバイブレーションをかけていく。

ストレッチ

・肢位:側臥位

1、腰部に枕等を入れ、上部の下肢をベッドから下ろし(前方と後方)、体幹側屈位をとる。

2、骨盤前方回旋と後方回旋にて骨盤と腋窩部を引き離す。

・肢位:背臥位

1、伸張側の股・膝関節伸展位で、股関節を外旋・内転する。

2、非伸張側の股・膝関節を屈曲し、伸張側の内転を防がず、力を加えた方向への骨盤の回旋も防ぐ。

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