殿筋群(大殿筋と中殿筋と小殿筋)の起始停止と作用!評価やアプローチの紹介!

殿筋群について

下肢帯の筋(muscles of the pelvic region)は骨盤の周辺にある筋群で、骨盤腔の内壁をつくる内寛骨筋群(muscles of the iliac region)と、殿部にある外寛骨筋群(muscles of the gluteal region)に区別される。

外寛骨筋群には、比較的大きな殿筋群と、深側の小さな筋よりなる外旋筋群がある。殿筋群には大殿筋(gluteus maximus m.)、中殿筋(gluteus medius m.)、小殿筋(gluteus minimus m.)、大腿筋膜張筋(tensor fasciae latae m.)がある。大殿筋は骨盤の背側を広く覆う広大な筋で、直立歩行をするヒトではこの筋が非常に発達している。中殿筋・小殿筋は大腿の外転に働く。

起始停止と作用

大殿筋(gluteus maximus m.)

起始:腸骨翼の外面で後殿筋線の後方、仙骨・尾骨の外側縁、仙結節靱帯、腰背筋膜

停止:大腿骨の殿筋粗面腸脛靱帯を経て脛骨外側顆前面の粗面(上部線維→腸脛靭帯に付着、下部線維→殿筋粗面に付着)

神経:下殿神経((L4)、L5S1、(S2))

栄養血管:上殿動脈、下殿動脈

作用

上部線維→股関節の伸展、外旋、外転(踵接地後~立脚中期で作用、支持側へのブレーキ)

下部線維→股関節の伸展、内転、外旋(踵接地直後で作用、重心を支持側へ誘導)

関連臓器:生殖器及び生殖腺→経穴  大陵

中殿筋(gluteus medius m.)

起始:腸骨翼の外面で前および後殿筋線の間、腸骨稜外唇および殿筋筋膜(広い)

停止:大腿骨大転子の外側面、上面、前面

神経:上殿神経(L4S1)

栄養血管:上殿動脈

作用:前部線維→股関節の屈曲、外転、内旋、後部線維→股関節の伸展、外旋

小殿筋(gluteus minimus m.)

起始:腸骨翼の外面で前および下殿筋線の間(広い)

停止:大腿骨大転子の前面

神経:上殿神経(L4S1)

栄養血管:上殿動脈

作用:股関節の外転、内旋

※上殿動脈:内腸骨動脈からの最大の枝で、梨状筋を通過し外に出て浅枝、深枝に分かれる。

浅枝→大殿筋と中殿筋の間を走行し、大殿筋を栄養する。

深枝→中殿筋と小殿筋の間を走行し、中殿筋と小殿筋を栄養する。

※上殿神経:上殿動脈と並走して梨状筋の上部と中殿筋と小殿筋の間を通過し、大腿筋膜張筋に終わる。

※下殿神経:仙骨神経叢からおこり下殿動静脈と並走し、梨状筋の下を通って大坐骨裂孔から骨盤を出る。そこでいくつかの枝に分かれて大殿筋に分布する。

関連症例

大殿筋

○大腿外側や前面の痛み。→腸脛靭帯との連結による影響。

○トリガーポイントができやすい。→日常生活にて遠心性収縮を繰り返す。

○大腰筋の筋出力低下。→大殿筋から背筋群の過緊張。

○立ち上がりでの膝(内側)の痛み。→殿部離床時の内転筋群の過緊張。

○腰部外側背側の痛み。→胸腰筋膜との連結。

中殿筋

○腰痛。

○大腿前面、後面、外側面、殿部の痛み。

○股関節の痛み。→前部線維の影響。

○歩行時の安定性。→ラテラルラインの影響。

小殿筋

○腰痛。

○大腿骨頭の不安定化。

○坐骨神経痛のような症状。→大腿後面、外側の痛み、痺れ。

○ラテラルライン上での問題。

評価とアプローチ

大殿筋

評価

MMT、股関節屈曲ROM、殿部のボリューム、片脚立位、歩行時の重心移動、足踏み(どちらから上げるか、重心をかけにくい方から足を上げる傾向がある)

アプローチ

側臥位にてトリガーポイントを触れる。特に上後腸骨棘(PSIS)の下方や下部線維沿い、仙腸関節沿いに多い。トリガーポイントにコンタクトし、圧痛がなくなるまで待つ。痛みがない場合は、全体的に行う。

中殿筋

評価

MMT、片脚立位、歩行時の重心移動、足踏み(どちらから上げるか、重心をかけにくい方から足を上げる傾向がある)

アプローチ

○前部線維:側臥位にて大腿筋膜張筋から腹側に1横指の部位にコンタクトし、圧痛がなくなるまで待つ。※人体で1番痛覚受容器が多いとされているので注意すること。

○後部線維:側臥位にて大腿筋膜張筋から背部の大殿筋と中殿筋の重なりを触診。大殿筋と重なりのない腸骨稜付近の中殿筋にコンタクトし、圧痛がなくなるまで待つ。筋肉対し垂直に圧を加える。

どちらも圧の強さは変えずに行い、圧痛が軽くなってきたら教えてもらう。

※首はまっすぐにし、ラテラルラインに力が入らないようにする。

小殿筋

評価

MMT、片脚立位、歩行時の重心移動、足踏み(どちらから上げるか、重心をかけにくい方から足を上げる傾向がある)

アプローチ

側臥位にて腸骨稜から後尾方(1~2横指)に触診し、中殿筋と小殿筋の筋間を触れる。中殿筋を介して小殿筋にコンタクトし、圧痛がなくなるまで待つ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました