腰方形筋(quadratus lumborum m .)とは
腹部の筋(muscles of the abdomen)は筋腹の部位により、前腹筋群(abdominis anteriores mm.)、側腹筋群(abdominis laterales mm.)、後腹筋(abdominis posterior m.)と骨盤の筋に分けられる。胸郭と骨盤の間や骨盤底に張って腹腔のまわりと底の壁をつくる。この部分には骨格がないので、腹部内臓・骨盤内臓は筋のみで支えられる。排尿や排便の際には、腹圧を高めるためにこれらの筋が共同して働く。腹圧が高まると四肢からの静脈の還流も妨げられる。また、腹部の筋は背部の筋や腰筋(内寛骨筋群)と共同あるいは拮抗して、脊柱の運動(屈曲、側屈、回旋)を行う。前腹筋群と側腹筋群は肋間神経(下部は腰神経の枝)、後腹筋は腰神経叢の枝、骨盤の筋は仙骨神経叢の枝によって支配される。
後腹筋(abdominis posterior m.)には腰方形筋(quadratus lumborum m .)がある。腰椎の側屈、第12肋骨の下制に働く。腰神経叢の枝(L1~L3)に支配される。
起始停止と作用
腰方形筋(quadratus lumborum m .)
起始:前層→腸骨稜と腸腰靱帯、後層→腰椎助骨突起
停止:前層→第1~(3)4腰椎の肋骨突起と第12肋骨、後層→第12肋骨の下縁
神経:腰神経叢(T12~L3)
作用:片側が働くと骨盤の挙上または腰部を同側へ側屈、両側が働くと腰部の伸展
機能と影響
・腰椎の安定化。
・大腰筋、腹横筋、腸肋筋、最長筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋と連結。
・殿部後面~側面に関連痛あり。
・反り腰。
・腰痛と関連が強い筋肉。
→胸腰筋膜で覆われている。
→横隔膜との連結。
→大腰筋、腹横筋との連結。
・ラテラルラインとの関連。
・ディープフロントラインとの関与。
→呼吸のみでなく姿勢保持やグランディングとも関与している。
触察
腰方形筋の前外側上縁を触察する。
1、触察者は触察部位の外側方に位置する。
2、半側骨盤幅の中央部を通る矢状面と第12肋骨との交点を確認する。
3、腸骨稜上で上後腸骨棘の後端と上前腸骨棘の前端との中点を確認する。
4、2と3を結ぶ線を想定する。
5、想定した線に指を添え、後内側尾方へ圧迫しながら指を前方~後方間に移動させる。
・同側の骨盤を自動挙上させると、腰方形筋が収縮し、触知しやすい。
・腰方形筋の停止付近の筋腹は、厚い腸肋筋の筋腹に覆われるため、触知しにくい。
評価とアプローチ
評価
圧痛、骨盤のアライメント、体幹前屈可動域、体幹側屈可動域
アプローチ
・肢位:側臥位(肩峰、大転子、外果を直線に揃え、姿勢を整える。)
腰方形筋の硬結部位にコンタクトし、骨盤を肋骨の方に近づけ硬結が緩むのを待つ。
ストレッチ
・肢位:背臥位
1、伸長側と対側に位置する。
2、両膝を立てた状態から、左右どちらかへ倒す。(倒した側の対側が伸長される)
3、片手は肋骨を固定する。対側の手で骨盤を尾方へ引く。
4、その状態を止めてもらう→休むを繰り返し行う。
・肢位:側臥位
1、腰部に枕等を入れ、上部の下肢をベッドから下ろし(前方と後方)、体幹側屈位をとる。
2、骨盤前方回旋と後方回旋にて骨盤と腋窩部を引き離す。
・肢位:一側開脚座位
1、伸長側の下肢を屈曲させ、大腿近位部を固定する。
2、肋骨下部を股関節から引き離すようストレッチを行う。
・肢位:側臥位
1、バランスボール上で体幹を側屈させる。
2。肋骨下部と骨盤を引き離す。
※若年者で可能な人に行う。
トレーニング
・肢位:背臥位
骨盤に手を添えて、腰(骨盤)を引き上げるイメージで左右交互に行う。
・肢位:長座位
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